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電子契約サービスで業務効率化を図るGMOの「さよなら印鑑キャンペーン」#WORKDESIGNAWARD2021

WORK DESIGN AWARD」は、働き方をアップデートするために奮闘する組織や人を応援したいという思いから創設されたSmartHR主催のアワードです。初開催となる2021年は、6部門を設け、合計で100を超える企業や団体から応募が集まりました。

そのなかでワークプロセス部門に選ばれたのが、GMOインターネットグループの「さよなら印鑑キャンペーン」です。コロナ禍で出社が制限されるなかで、これまで慣習だったハンコ文化にも変化が起きています。そのなかで同社の取り組みはどのように進んでいったのでしょうか。話を伺ったのは、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社電子契約事業部部長の牛島直紀さんです。

牛島直紀(うしじま・なおき)
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社電子契約事業部部長。2007年にGMOホスティング&セキュリティ株式会社(現 GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社)入社。クラウド・電子認証事業の法務を担当。 印紙税について調べる中で、電子契約のメリットと自社商材により電子契約が締結できることを知り、グループ企業との取引で利用を始める。2014年、電子契約のクラウドサービス化を企画・立案し、2015年より現職。2016年経済産業省 電子署名法研究WG構成員。共著に『リーガルテック・AIの実務ーデジタル・トランスフォーメーション(DX)時代の企業法務改革』(商事法務・2020年)

トップダウン×ボトムアップで、サービスの無償提供がすばやく実現

2020年1月、新型コロナウイルスが国内でも猛威をふるいはじめた頃。GMOインターネットグループは、多くの企業よりもひと足早く在宅勤務体制に移行していました。ところが、リモートワークで業務を進めるにあたり、浮かび上がってきたのが“ハンコ通勤”という課題でした。押印手続きのためだけに出社しなければいけない場面が、少なくなかったのです。

こうした状況をなんとかできないかと考えるなかで、GMOグローバルサイン・ホールディングスの「電子印鑑GMOサイン」というサービスが、少しずつ需要を伸ばしていることを発見しました。これは、PDFファイルに電子署名とタイムスタンプを付与することで、いつ誰が電子ファイルを作成したのか“証拠”を残せる電子契約サービス。従来の印鑑と同じ法的効力があり、出社しなくても押印作業がこなせます。 

「電子印鑑GMOサイン自体は2015年秋から存在しているサービスなんです。ただ、契約は相手方のあることなので、先方の理解が得られず、使えない場面も多かった。それはGMOインターネットグループも例外ではなく、グループ内にアカウントはあるものの、なかなか利用されませんでした」

その風向きが変わったのが、コロナ禍という未曽有の事態でした。GMOインターネットグループ全体で「お客さま手続きにおける印鑑の完全廃止」「契約は電子契約のみとする」という方針を発表。世の中の先陣を切って“脱ハンコ”への取り組みをはじめたのです。

「大きかったのは、熊谷(正寿)代表から脱ハンコの大号令が出たこと。それによって、私たち自身がこのサービスを利用する理解を周囲に得られやすくなりました。サービスをお使いいただくお客さまの社内でも、業務フローの調整が一気に進められたのではないでしょうか」

また、熊谷代表のひと声で、もともと3ヶ月の予定だったサービスの無償提供期間も1年に延長。多くの企業が悩んでいた“ハンコ通勤”に対して、大きな一手を打つことができました。

「『日本でDXがなかなか進まないのは、すべてボトムアップの施策だからだ』という話を聞くことがありますが、今回はトップダウンとボトムアップが絡み合い、迅速にサービスをお届けできたと感じています。『無料キャンペーンを1年間に延長したい』なんて、提案資料を揃えて稟議を上げるプロセスを踏んでいたら、お客さまの欲するタイミングには間に合わなかったでしょう」

商談やセミナーもWebで対応。安全性や利便性を丁寧に啓蒙していった

GMOインターネットグループ全体のリモートワーク移行が早かったため、遠隔で業務を進めると何が起きるのかイメージできていたのも、キャンペーン成功の要因です。開発や運用・お問い合わせ対応など、リモートワークによって出てくるニーズを考えて、社内の体制を整える余裕がありました。

「電子印鑑GMOサインへのお問い合わせ件数がぐっと増え、営業が1人で1日に9商談をこなすような場面も出てきたため、スタンダードな導入支援の説明はすばやくウェビナーに切り替えることにしました。それでも参加希望者が多く、100人限定セミナーなどはウェブに公開後1時間で埋まってしまう状況に。最終的には、ウェビナーのシステムのライセンス数を増やして乗り切っていました」

ただ、電子契約サービスの導入には、通常の業務効率化サービスよりも大きな心理的ハードルがあるのだそう。そのために、営業担当者からの細やかなサービス説明や情報発信が欠かせないと牛島さんは説明します。

「お客さまの初期認識は、『電子契約というものがあるらしい』という程度のものなんです。うまく使えばハンコ通勤をしなくてよくなるとはわかっていても、電子契約というものが本当に安心なのか信じきれない。だから、一歩を踏み出しにくい。その不安を解消するために、安全性や法的な有効性をきちんとお伝えすることはもちろん、紙で押印申請していた既存のワークフローとの整合性をどう担保していくのかというところまで、丁寧にフォローするようにしていました」

同年6~9月には「さよなら印鑑キャンペーン」と題し、脱ハンコに対する賛否の意見や“無駄ハンコ”にまつわるエピソードを募集。大きな反響を呼びました。

キャンペーン中に実施した「無駄ハンコ実態調査」には、8万5,764もの投稿があり、ハンコに対する意識が浮き彫りになりました

「ハンコや契約書を使う業務はあまりにも当たり前すぎて、その非効率さを見逃してしまっている方が少なくありません。だからこそ、エピソードを募集することで、その作業をあらためて見直してもらい、『本当にそれって必要?』と考えるきっかけを提供したかったんです。また、私さんたちにとっても社会の実態やニーズを再認識する機会になり、サービスを提案する土壌の掘り起こしにつながりました」

官公庁や自治体にも手を広げ、DXを促進していく

翌年の2021年1月からは、官公庁や自治体に対しても導入支援を開始します。これまで自治体では、クラウドシステムの活用が認められておらず、長らく実現が難しい状況にありました。ところが、2021年1月から規則が変わり、クラウドサービスが使えるようになったのです。このことを機に同社は、都道府県単位から離島地域の自治体まで、さまざまな規模の全国103自治体(2022年4月)と連携し、電子印鑑GMOサインの実証実験に取り組んでいます。

「導入にあたってシステム的なハードルもありましたが、民間よりも印鑑管理規定などが厳しいからこそ、電子契約が活きてくる。業務工数や業務時間が大幅に削減できることがわかり、徐々にサービス導入が進んでいます」

業務効率化を図りたいのは、どんな事業者でも同じ。「それぞれの状況に寄り添い、サービスの使い方やメリットを見つけ出すことで、企業60万社(2022年4月現在)の“脱ハンコ”実現のサポートができた」と牛島さん。
 
「電子印鑑GMOサインは、契約のほかにも『紙で証拠を残さないといけない業務』には、なんでも対応できるツールです。請求書や領収書、企業の在籍証明書や大学の卒業証明書などもそう。電子署名とタイムスタンプを提供するサービス「電子印鑑GMOサイン 署名エンジン」の提供もはじめました。紙をなくしていくことはとてもわかりやすいDXなので、その領域にも力を入れていきたいと考えています」

ユーザーの声を拾い、さらなるサービス拡充を目指す

 電子印鑑GMOサインの導入によって、利用者からはさまざまな喜びの声が届いています。

たとえば建築・不動産業界では、売買契約や工事請負契約、変更合意書などの重要な締結業務に際しても、お客さまの来店が不要に。しかも締結データを本社で一括処理できるようになったため、これまで最長1ヶ月程度かかっていたような契約も、最短1日で終えられるようになりました。

また、ある企業では2,000人分の業務委託契約を完全電子化したことで、倉庫に年間で預けていた段ボールや書類の管理業務がなくなったとか。

「当社の電子契約サービスは、印鑑証明に基づく実印を使う契約と認印で大丈夫な契約、その両方に対応できるのが特徴です。だからこそ、さまざまな業種のさまざまな契約に取り入れていただき、業務効率化のサポートに貢献できています」

多くのユーザーの声を受けながら、機能の充実も進んでいます。最近では、マイナンバーカードと連携した電子契約や、個別のサービス導入支援なども実施しているのだそう。

「電子契約という分野で先頭を走っている企業として、常に新しい提案をしていきたいと考えています。たとえば、これまで導入支援は汎用的な資料やハンズオンセミナーに留まっていましたが、他社事例なども紹介しながら、担当の方が社内のさまざまなハードルを円滑に越えられるよう、しっかり伴走できればと思っています。

ハンコやサインなどの物理的な作業がなくなることで、業務時間に余裕が生まれ、より高度な仕事に力を注げるようになるはず。お客さまの貴重な時間を、電子印鑑GMOサインによって取り戻していきたいですね」

文:菅原さくら 撮影:田野英知

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