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読む、 #ウェンホリ No.02-02「私たちのしんどい日常を、哲学がぶち壊してくれたら」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。今回は、第2回のタレント・新内眞衣さんと哲学研究者・永井玲衣さんの対談から「私たちのしんどい日常を、哲学がぶち壊してくれたら」をお届けます。

トークも終盤に差し掛かり、話は二人にとっての“心地良さ”について。永井さんは哲学対話をする際、考えることが心地良い場になるように心がけていると話します。

<No.02-01から続く>

考えることが心地良い場をつくりたい

新内:まあ、そんななかで心地良さってどんなところにありますか? って……ちょっと唐突すぎますね。すいません(笑)。

永井:たしかに(笑)。「そんななか」って、どんななか? みたいな(笑)。

新内:でも、プライベートは完全に仕事から離れるっていうのが結構難しい状況にあるとは思うんですけど。心地良さって、その永井さんのなかにはどんなところにあると思いますか?

永井:うーん。難しいですよね。哲学対話、前回一緒に眞衣さんとしましたけど。私はあの場を心地良い場にしたいなっていうのは何よりも思っていて。もちろん対話なので、互いに攻撃的な言葉がないようにとかいうような、ある種の緊張感はあるんですけど。ただ、「考えるっていうことが心地良い」という場にしたいなっていう。でも、それってどういう場なんだろう?ってことをずっと考えながら10年くらい、やってる気がしますね。

新内:はじめて私は哲学対話っていうのをしたんですけど。その、発散というか。対話がある種の心地良さになるなってすごい今日、思いましたね。

永井:おお、嬉しい!

新内:なんかやっぱり押さえ込むことって多いじゃないですか。感情とか言葉とかを押さえ込むっていうことはやっぱり大人になればなるほど、それこそね、これを聞いてくださってる社会人のみなさんとかでもすごい多いことだと思うんですけど。なんか、心地良い空気のなかに発散すると、こっちまでやっぱり心地良くなるんだなっていうのはすごい今日、感じていて。心地良さの物差しってたぶん、日常生活のなかでいろんなところにあるんだなってすごく感じました。なので、ねえ。哲学はもっとこれから、哲学対話がいろんなところで流行るじゃないですけど、行われたらすごい素敵な世界になるんだろうなって思いました。

永井:ああ、嬉しい。ねえ。集まって考えるっていうことは本当にやっぱり私たち、苦手で。だけど、それでもやっぱり、そんななかで心地良くこの場をつくるってどういうことだろう? ってことを常に考えながら共に哲学をするっていう経験って、あまりないじゃないですか。そういう……もちろん哲学するってことも大切にしたいし、同時に心地良い場をつくっていくってことも試してみたいというか。やっぱり人が集まって考える場って基本的に危険な場が多いじゃないですか。

新内:そうかもしれないですね。

永井:会議とか。まあ、会議。とにかく(笑)。会議とか本当、危険すぎる場で。ハラハラドキドキみたいな。上司がいて、「ちゃんとしたこと言わなきゃいけない」ってずっと背中に汗をかいちゃうみたいな。「こんなことを言ったら怒られる」とか。教室とかもそうですよね?

新内:そうですね。

永井:だからみんなが無理をしない場。みんなが心地良いと思える場を、完全にはもちろんつくれないんだけれども。でも、つくろうとし合うっていうことが哲学対話かなと思いますね。

新内:ちなみに哲学を通して、どんな世の中にしたいとか……ちょっと、すごく漠然とした質問になってしまって申し訳ないんですけども。

永井:どんな世の中にしたいか?

新内:哲学を通して。もしくは哲学対話を通して。

永井:うんうん。ねえ(笑)。世の中、ねえ……。

新内:世の中。「世界が怖い」とおっしゃっていた永井さんですけども。

永井:そうですね。哲学対話をするとき、私は「普段とは違う場をつくってみましょう」ってよく言うんですよね。普段の生活常……常に私たちは哲学しているとは言ったんですけど。でも「こんなことを不思議に思っていて」とか言うとみんなに「はあ?」とか「病んでる」とか「中二病」とか「気持ち悪い」とか言われちゃうというこの社会のなかで。あとはなんかいいことを言わなきゃいけない、正解を言わなきゃいけない社会のなかで、でもここはどんな問いもバカにせずに、ちゃんと取り扱って真剣に悩んで。それでちゃんと聞き合うっていうようなところをつくってみたいと思うんですよね。

それがいつか、まあひとつの居場所じゃないですけど。アジールというか、逃げ場みたいなふうな働きをしていたものがいつか、哲学がその対話の場から溢れ出て、私たちのそういうしんどい日常をぶち壊してくれたらいいなってどこかで思っていて。だから、そのつらい会議がちょっと哲学対話っぽくなるとか、ふとした日常で「こんなことを自分は考えちゃいけないんじゃないか」って思ってるような自分が「でもあの哲学対話の経験をして、あればすごい楽しくって。こういうことを考えてもいいんだ」っていうふうに自分を許せるとか。なんかそういう哲学が壊していくっていうか、みんなの日常の中に侵略してくるみたいな。そんな世の中になったら愉快だなとは思いますね。

新内:今、おっしゃっていた「特別な場にする」っていうのは、たぶん非日常っていうことじゃないですか。それを日常にしていくってことですよね?

永井:そうですね。日常……すでにあるつらい日常を破壊してくっていうか(笑)。ちょっと魔王みたいな話で、怖い、危ない……(笑)。哲学の魔王みたいな(笑)。

新内:すごいですね!

<No.02-03へ続く>

文:みやーんZZ


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