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読む、 #ウェンホリ No.19「思いがけなさが人生を切り拓くこともある」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。

第19回では、アナウンサーの堀井美香さんと現代仏教僧の松本紹圭さんが、「頑張らない自分も肯定したい。“目標”という呪いから解放されるには?」をテーマに語り合いました。

夢や目標を持ち、努力していくことはもちろん大切ですが、それにがんじがらめになってしまうと“思いがけなさ”に出会う機会が減ってしまうと松本さん。どのような心がけが必要なのでしょうか?

夢や目標は“呪い”にもなりうる!?

堀井:今日はですね、そんな松本さんのバックボーンを知ったところで、こんなテーマで進めていきたいと思います。「頑張らない自分も肯定したい。目標という呪いから解放されるには?」ということなんですが。ちょっと「呪い」っていうワードが、なかなか強くてね、びっくりしますけれども。

お坊さんである松本さんを前にして「呪い」というと、霊的なイメージを感じてしまう方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、そうではなくて。松本さん、過去のインタビューで「やりたいことや夢、目標は呪いにもなりうる」というふうに話してらっしゃるんですね。この場合の呪いというのはどういう意味で松本さん、おっしゃっていますか?

松本:そうですね。なにか霊的なものとかっていうんじゃなくて、むしろ自分で自分にかけてきてしまった呪いっていうのも強いのかなと思いますよね。でも、その「自分」っていうのも、いろんな人とか環境との関わり合いの中で形づくられてくるものなので。たとえば、親からずっとかけられてきた言葉もそうかもしれないし。学校の先生とか、友人とか、そういう教育の場でもそうかもしれないし。多くの人が幼少期から社会人に至るまで、やっぱり「夢を持て」「目標を持ちましょう」ということをすごく強調されると思うんですけれども。

でも、それに縛られてしまっている人っていうのを私、かなりいろんな世代の方と話をしますが、少なからずそのへんで引っかかっている方が多いんじゃないかな? っていう気はしますね。

堀井:どうしてもやはり「夢を持つことはいいことだ」ということを小さい頃から教わってきますけれども。でも、夢を持つこと自体はどうでしょうか?

松本:いやいや。「松本さんは『夢を持ってはいけないよ』って言うんですか?」っていうふうにたまに聞かれることはありますけれども。そうじゃないんですね。いや、いいんですよ。夢は持たれたらいいと思いますし、素敵なことだと思うんですね。ただ、それをあまりにも強く持ちすぎると、「この夢が叶ったら成功だけれども、その通りにならなかったらそれは失敗だ」っていう感覚にもなりますよね。で、それはある種の呪いになりうるのかなと思いますね。やっぱり「こうありたい。いつかこれが達成できたらいい」っていうふうに何かを強く思うということは……それって未来の話ですよね?  言い換えると、今はそれがない。だからそういう今の私を否定することが裏返しとして必ず含まれているわけですよね。

で、確かに見渡してみると、私たちの日常生活のなかで、言ってみればニンジンをぶら下げて。ずっとそれに向かって駆り立てられるような。まだ手にしていない何かがそこにあるっていう。で、それがインセンティブとか、まあ最近いろんな言葉がありますけど。そうしたものとして設定されて駆り立てられるというような。でも、それってよくよく考えてみると、「満足する」っていうことはずっと、永遠にありえないことでもあって。そこはなかなか苦しいと思うんですよね。

堀井:うんうん。なんか自分には足りないものの感覚って、常に持っていると苦しいですよね。やっぱりね。

松本:そうなんですよね。よく、特に学生さんとか、若い方にお話するんですけども。「いやいや。夢を持つっていうこと自体が悪いわけじゃないよ」と。ただ、たとえばそういうみなさんが憧れの誰か……自分の立場からしたら「本当にこの人は成功した方だな」って思っているような人のインタビューを実際にしてみると、「あなたは今のその立ち位置になるまで、ずっとそれをきっちり設計して、それを目指してやってきましたか?」って聞いてみると、必ずしもそうではない。というか、そうじゃないことの方が多い。むしろ人生には思いがけないことがたくさんあって、そういうものに満たされていて

「元々はこういうふうにやってきたんだけれども、あるとき、たとえば挫折であったり、思いがけないいろんなことが起こって。そんなときにたまたま出会ったこういう方がいて。そしたら、思ってもみなかった方向に人生が開けていったんです」とか、すごいあるじゃないすか? だから夢を強く持つ。で、「私はこれに向かっていくんだ!」っていうのを強く持ちすぎると、その思いがけなさに目がなかなか開かれていかなくなる。でも、そこが閉じちゃうっていうのはすごくもったいないんじゃないかなと思うんですよね。

心に“遊び”がないと、思いがけなさには出会えない

堀井:がんじがらめになってね、方向転換が俊敏にできなくなりますよね。

松本:そうですね。でも、考えてみたら大学1年生のときに10年後なり、大人になったら自分はこういう仕事について、こんな活躍をしていたいと思うとするじゃないですか。で、実際に10年後、それは思い通りになったとする。でもそれは成功なのか? っていうと、それはまたわかんないと思うんですよね。というのは、だって大学1年のときってまだ視野も狭いと思うんですよね。で、その時点で想像できた未来なわけですよ。だからそれは「大学1年生のときに想像できた範囲内に10年後の私はとどまっている」っていうことでもあるわけで。

だから、もしもね、夢を持つのであれば、今の自分が想像できる範囲でしか想像できないから。それはそれでいいけれども。でも、もう1個、「もしかしたら今、想像もできないような私になる」っていう、そういう選択肢とか可能性っていうのも同時に持つといいんじゃないですか? なんていうお話はしますね。

堀井:ああ、とってもいいお話を伺いました。なんか、私事ですが、私は会社員のとき、たとえば同じイベントとかビジネスを手がけるにしても……たとえば朗読会みたいなものをずっとやってきたんですけど。会社にいると必ず、システムとして組織のなかにいるし、お金を生み出すとか、成功させなければいけないとか、全部プラスに持っていくとか。どこにPRを出したとか。会社の人全員に対して「その事業がうまくいってる」っていうように見せてあげなければいけないし。その作品がどうこうよりも、数字であったり、評価であったりっていうところに終始してつくってきたわけなんですけれども。

でも今、会社を一歩出て、自分だけの会をやるときに、もうそういうのはまったく関係ないんですよね。中身だけに集中すればよくって。それで結果、それがどうなるとか、これを続けていったらどういうことが起こるんだろう? っていう思考はまったく……なんていうんでしょう? 結果を求めるっていうよりも、これがどう変化していくんだろう? 将来、どうなってるんだろう? っていうのがわからない楽しさがあって。すごくそれがいいなと思ってるんですよね。だから最初から目的思考ではまったくなくて。そういうことですよね、きっと。

松本:そこなんですよね。それってたぶん、あらゆる組織がかかっている病というか。なんか「目標を設定して、それを達成する方向に向かっていく」ということでないと一歩、踏み出してはいけないっていう感覚ってすごく強くて。私もいろんな組織の方とお話してるなかで感じますし。ひとたび目標を設定して、そこでコンセンサスをつくれば、今度はそれがすべてを縛るものになって。で、「そこに向かっていくために必要だから、これをやります」みたいな、仕事が全部言い訳づくりみたいになっていくわけですよね。本当にこれは……最後は「これは誰のため、何のためにこの言い訳めいた資料を今、つくっているんだろうか?」みたいなね。

堀井:すごいわかります(笑)。

松本:みんな疲弊していく感じって、すごいありますよね。

堀井:でもやっぱり、チャレンジはすごく許されます。私の元の会社もそうだったんですけれども。チャレンジすることもいいし、新しいことをやる気持ちもどんどん買ってくれる。でもやっぱりそれは1回、2回の話であって。いつかちゃんと結果を出すものですよね、とか。それを使ってまた新たに創造していけるものなんですよねっていう、未来にちゃんとプラスになるように動かないといけないものなので。「ああ、やってよかったな。満足だったな」みたいな、それだけではきっと終われないっていう責任感みたいなものは背負っていましたね。

松本:ありますよね。それはきっと会社員の方もそうでしょうし、学生さんとかも、どんどんそういう勢力がこの社会には広まっている感じもするので。でも、それが行き過ぎると、世の中に遊びがなくなって。思いがけなさの扉が閉じちゃう。そしたらもう、完全に社会は窒息するので。たぶんその前に「ちょっとこれはもう無理なんじゃないか?」っていう予感を持ってる人が段々と増えてきて。そんななかで、まあ私もそうでしょうけども。仏教であったり、ちょっと今までの発想とは違う物の考え方とか捉え方を取り入れてみようっていう流れもちょっとずつできてきてるのかなっていうのは感じますね。

<書き起こし終わり>

文:みやーんZZ


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