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読む、 #ウェンホリ No.09「仕事から離れることでわかる自分の置き場所」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。

第9回では、アナウンサーの堀井美香さんとエール株式会社取締役の篠田真貴子さんが、「その人らしく生きるための個人と会社の関係」をテーマに語り合いました。

実は篠田さん、1年ほど働かない「ジョブレス」の期間があったそう。その間に自分を見つめ直すことで、次を踏み出す活路が見えてきたと話します。

「ほぼ日の篠田さん」ではなく、「ただの篠田さん」へ

堀井:篠田さんはほぼ日さんを辞められてから「ジョブレス」の期間があったという。これも、私は50歳で(TBSを)辞めたときに、もうやっぱり「次の石を置いておかないと!」と思って必死だったわけです。そのジョブレスとか、なにかを1回やめるっていう勇気もなかったし。そんなことは考えられなかったんですけど。ジョブレスする勇気は、よくありましたね(笑)。自然な流れだったんですか?

篠田:自然な流れと……まあ、でも自然な流れが8割、9割かな? まず前提として私、それまでに何回か転職をしてはいて。それまでの転職は、もう今の堀井さんと一緒で、次が決まっている状態で「辞めます」っていうことを元の職場にお伝えして……っていうふうにしてきた。だからギャップが空くっていうことはなかったんです。そういった経験もあったうえであらためて一旦、自分が本当に……ちょうど、たまたまそのときが50で。向こう、あと働くのが20年とか、それぐらいだとしたときに、「20年」って長いようで短いので。むやみやたらといろいろ試すっていうのでもないなと。

でも、冒頭でちょっとお話したように、なにか決まったことを繰り返すっていうのには、ちょっと長すぎる。というふうに考えて。なんて言うんでしょうね? いっぺん、ちょっとリセットっていうんでしょうか? それはしたいなと思いました。たまたまその前職のほぼ日っていう会社が、会社の規模の割に多くの方々が名前を知ってくださっている会社だったこともあって。「ほぼ日の篠田さん」っていうふうに知ってくださってる方が一定数いるっていうことも理解をしていた。

でも、当然辞めた後の私は「ほぼ日の篠田さん」ではなく、「ただの篠田さん」なので。まず自分の自己認識としても、それから周りの方が私を見るイメージとしても、その「ほぼ日」っていうものはちょっと切り離せるようにしないとよくないなっていう感覚があったんですよね。なので、時間はちょっと置くべきだなと。で、はじめは2、3ヶ月と思っていたんですが……そこからは2、3ヶ月だと本当に知ってる方と「久しぶり! 元気?」とか言ってご飯を食べてると、終わっちゃうんですよ(笑)。

堀井:楽しいですよね(笑)。

篠田:楽しい(笑)。もう、すごいアポの数で、むしろ忙しいみたいな。非常に楽しい時間だったんですが。そこのなかで、知人が本当に3日と置かずに2人、別々の人から「空けられるんだったら、もうちょっと間を空けたほうがいい」っていうふうに助言をくださったんですね。それはやっぱり、間を空けるのが短期間だと、それまでの自分の知った世界のなかで次を決めちゃうことになる。せっかく、そういう気持ちでちょっと間を置いてリセットしたいということであれば、もうちょっと間をおかないと結局、意味がないよと。

堀井:へー! だからそこの胆力ですよね(笑)。

好きを仕事にすることへの負い目

篠田:堀井さんって、考えなかったんですか? そうやって、ちょっと間を置くとか。

堀井:いや、もう恐ろしかったです。それは不安でしかなかったです。はい。だから、この年代でちょっと外に出てみようとか、違う仕事にチャレンジしてみようっていう方たち……まあ分かれると思うんですけど。冷却期間を置く勇気って、たぶんなかなかないと思うんですよね。みなさんね。私もなくって。もう、すごい分厚い橋を渡してから……。

篠田:石橋を叩いて(笑)。

堀井:叩いて。「辞めます」って言ってから、もうすごいのをつくって。それで船出をしたっていう感じですね。

篠田:そうですか。イメージだけで言うと、それこそ堀井さんのお仕事、アナウンサーのようなお仕事って本当にもう、ご経験もあるし。スキルも明確だから、次のステップ。組織に所属しなくても、とてもお仕事のしやすいタイプのお仕事に見えちゃうんですよね。むしろ、私のようなビジネスパーソンって、専門性があるようでないので。逆にちょっと「次、何?」って言われても、言われたことはできますけど……っていうふうになりやすいのかなって思っていたんですが。それでもやっぱり、堀井さんご自身のそういう専門性に関しても?

堀井:そうですね。たぶん、その「好きなことをやるんだ」っていう負い目ですよね。きっと。

篠田:負い目?

堀井:はい。好きなことをやって外に出る分、やっぱり仕事がなくなることとかもきっとあるだろうっていう。たぶん、負い目というか、マイナスのポイントを抱えてるんだっていうのはすごくあったんだと思います。地道な職業とか、いろんなビジネスをやっていく人とはまたちょっと違うんでしょうね。そこが。

篠田:へー、なるほどね。

堀井:そうなんです。篠田さん、でもその役割をやっぱりずっと期待されてきて。ジョブレスのときも、いろんなところから「お願いします」とか、きっとおありになったかと思うんですけれども。そういうのも、やっぱり跳ね除けて?

篠田:そうなんですよね。ありがたいことに、ちょいちょい「うちの会社を手伝って」って、知り合いの方に言っていただくことはあったんですけれども。なんか違う感じがしちゃったんですよ。その、さっきの堀井さんの「負い目」っていうのと実は逆の感覚だったのかもしれないですね。「できるか、できないか? だとできる気はするんだけど……でも、本当にそれがやりたいか? っていうと、なんか違う」って思って、お断りをする。

でも、そうこうしてるうちにも……「もう1年で決めよう」って。そういう知人の助言もあって決めたので。もうそこからは「とにかく1年、私はジョブレス!」っていうふうにスパッて宣言して。で、そうなると余計に自分のなかでも、なんていうんでしょう? 「この期間は本当に自分の好きに過ごす期間にしよう」って思ったんですよね。でも、結果的にですね、好きに過ごしたら……それでも、たとえばあるイベントで「パネリストとして来ませんか?」とか、お誘いはちょこちょことは、ありがたいことにいただいていて。

で、それを見ると、やっぱり「キャリア」とか「組織」とか、そういうテーマのものばっかりで。いや、自分も「面白いな」と思うから行くんですけど。周りのみなさんも、私はそういうことの人だっていうふうに……いわば、マーケットの需要がそこにあるっていうことなんだなって、客観的に知る機会にもなって。そういう意味でも、間を空けることで自分を世の中のどこに置くと……自分のわがままじゃなくて、自分としてもやりがいがあり、かつ世の中的にも「篠田真貴子をここに置くとよさそうである」っていう感覚がある、ちょうどそこがミートするところ。それがわかるのに、1年かかった感じですね。

未来に向かって考える期間がジョブレス

堀井:でも、ジョブレスってすごくいい言葉ですね。

篠田:流行らせたいんですよ(笑)。

堀井:今、思いました。なんか、休んでるようで、休んでない。なんでしょう? 「レス」がついてるんだけど、すごくなにかをしている、考えてる感じがとってもいいですよね。

篠田:そうですか。

堀井:ジョブレスって、いいですね!

篠田:いいですか? よかった! なんか、ふざけて……まあ、そうやってね、私が「ジョブレス」とか言ってヘラヘラしてたら、たとえば知人が「私の友達もジョブレスになったから、紹介していい?」とか言って、ジョブレス人脈がなんか広がったりとかして(笑)。

堀井:「明るい未来に向かって、ちょっと今、いろいろと考えてるんだ」っていうジョブレス。すごくいいと思いますね。

篠田:個人的には結構これ、おすすめしたくて。もちろん、人によってその期間を取るのが……その、不安にまみれながら取るっていうのはよくないので。ご自身が心地いいタイミングがあればぜひって思うんですよね。で、本当にね、「JOBLESS」っていうかっこいいTシャツとかつくって配りたいぐらいなんですけど(笑)。

堀井:なんか年代は別にその50とか、いろいろやった後っていうわけじゃなくって。まあ、本当に20代でもいいし。いろんな年代でジョブレスってできますよね。えっ、なんかやってみたいけど……あれ? やれないなって(笑)。

篠田:大丈夫ですよ。まだ、チャンスがありますよ(笑)。

堀井:その勇気、篠田さんからわけていただきたいです(笑)。

<書き起こし終わり>

文:みやーんZZ


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