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読む、 #ウェンホリ No.03-03「1人になって気づく、1人じゃ生きていけないこと」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。第3回のアナウンサー堀井美香さんと落語家・桂宮治さんの対談から「1人になって気づく、1人じゃ生きていけないこと」をお届けます。

落語や稽古だけでなく、スケジュール管理、入構申請に至るまで、すべての業務を1人で対応しているという宮治さん。その現状に対して「心地良さはあまりない」と話します。対する堀井さんは、フリーに成り立てということもあり、すべての仕事に対して200%の気持ちで応えたいそう。そんな2人の仕事の向き合い方について語り合います。

<No.03-02から続く>

働きやすい環境は、自分でつくっていかないといけない

堀井:いやいや。でも本当にもう、飛ぶ鳥を落とすとはこのことで。もう本当にこうやって積み重ねて積み重ねて、今の宮治さんがあるかと思うんですけれども。今はもう、心地良く働いてるっていう感じですか?

宮治:それがね……。

堀井:あら? やっぱり『笑点』が?

宮治:いや、『笑点』の悪口って、おかしいでしょう(笑)。出た! まだTBSの人間だ(笑)。「やっぱり『笑点』、嫌なんですか?」みたいな。この間、TBSさんの爆笑問題さんの『日曜サンデー』に出たときも、そんな話は一切してないのにオープニングでいきなり、もう放送がはじまった瞬間に太田さんが「そんなに『笑点』の師匠方が嫌いなんだ?」からはじまって。「言ってませんよ、そんなこと!」って。堀井さんも一緒ですね(笑)。なんなんですか? 「『笑点』が」って?(笑)

堀井:心地良いですか?(笑)

宮治:『笑点』の収録はめちゃくちゃ心地良いです。いやいや。でも、そうですね。だから「売れたい」とか「仕事がいっぱいあればいい」っていうのは確かにそうなんですけど。ただ今、すごいありがたい悩みなんですけど。二ツ目になってたまたまNHKの大きい賞をいきなりドン! って取ることができて。そこからある程度、仕事がワーッと来て。それを一生懸命こなしてきて。「楽しいな。落語をもっともっと……」ってなったんですけど。今、正直テレビのお仕事とか、こういうラジオのお仕事とか、新聞・雑誌、いろいろとご依頼を受けて。正直、1人でやっているので……。

堀井:はい。びっくりしました。どこにも事務所、入ってないんですって?

宮治:入ってないんですよ。どこも入れてくれないんですよ。

堀井:嘘ばっかり!

宮治:本当ですよ。セント・フォース、入れてくれないんですよ(笑)。

堀井:えっ、アナウンサー枠、なかったですか?(笑)

宮治:セント・フォースにはね、おっさん枠はなかったです(笑)。

堀井:なかったですか(笑)。そうですか。

宮治:まあ、「セント・フォースか、ジャニーズか」って考えてたんですけど。どっちも入れないんで(笑)。

堀井:オスカーもいいんじゃないですか?

宮治:オスカーですか。オスカーはちょっとまあ……どうしようかな? まあ、向こうが頭を下げてくんだったらって、そんなこと言っちゃ(笑)。いや、でもマネージャーさんを今、来月ぐらいから1人、お願いしようかと。来月ぐらいからちゃんとついてくれるように今、やっていて。そうなると少し心地良く働けるかな? っていうか。やっぱり落語をやって、稽古もして、スケジュール管理もして、入構申請もやって、テレビの裏かぶりも考えてって、これを1人で全部やるっていうのは無理で。

落語ってなんか、落語家さんが1人でやっているようだけれども、それでもやっぱり前座さんが太鼓を叩いてくれたり、三味線の方が三味線を弾いてくれたり、寄席の従業員の方々がもぎりをやってくれたり、チケットを販売してくれたり、場内整理してくれたりするからこそ、我々は座布団の上で1人でしゃべれるわけで。なんかあらためて、「ああ、人の助けがないと自分は生きていけないんだな」っていうのをすごく今、感じられるので。

堀井:そういう雑務じゃないですけど、なんか事務事があると、24時間いろいろと仕事しなきゃいけないんじゃないですか? 連絡が来たりとか。

宮治:今日も今、千葉の方の学校公演。高校の学校公演を終えて今、このスタジオに来ている途中も、本当に10件ぐらいメールのやりとりして。そのうち、それ以外に2件、電話をして。

堀井:へー! それ、私やりましょうか?(笑)

宮治:堀井さん、ちょっと待ってください。さっき言ったんですけども、もうマネージャーさん、つくんで大丈夫です(笑)。なんか結構、持っていかれそうな気がして嫌です。なんか(笑)。「私、ギャラ高いですけど?」みたいな(笑)。

堀井:「ちょっとメイク入っていいですか?」みたいな(笑)。

宮治:出方じゃないのに(笑)。

堀井:いや、でもそうですよね。なんかそういう事務処理をやってくださる人って必要ですよね。

宮治:そうですね。でも自分のこの働きやすい環境を整えるには、やっぱりいろいろ、自分でまた動かなきゃいけないんだなっていうのは最近、すごく思うので。やっぱりいろんな人の手助けというか、助けがないとできないんだなっていうか。人生、みんなそうですけど。生まれてくるときとね、死ぬときは1人ぼっちですけど。その間はね、生まれた瞬間からお母さんにおっぱいを飲ませてもらってますからね。誰かに助けてもらわないとダメなんだなっていうのはもう本当に……「1人でできるかな?」ってちょっと思ったんですよ。スケジュール管理とか、結構得意な方だったんで。でも、やっぱり無理ですね。やっぱり……もう人に頭下げて生きていかないとなとって思いました。

堀井:いやー、今のお忙しさもあってね、やっぱり人が入ってないと……っていうのはありますよね。

依頼された仕事に200%の気持ちで応えたい

宮治:いやいや、というかまあ、そうですね。いろんな人と一緒に、ねえ。頑張っていきたいなと思いますけど。堀井さんはどうなんですか? 心地良く働いてるんですか、今?

堀井:ああ、やっぱり心地良さを目指してますけど、会社員の時はもう常に携帯が一緒で。私、「デスク」という仕事もしていて。

宮治:管理職みたいな?

堀井:そうですね。で、下に10人ぐらいですかね? アナウンサーがいて。その仕事の管理をするんですけど。やっぱりコロナ禍だったりすると、「ちょっと熱が出た」っていうともうすぐに夜中に何人か、代わりの子を探して電話をしたりとか。

宮治:チーフマネージャーみたいなものですね? 全部こう、パズルをして。

堀井:そうです、そうです。だからもう、常に携帯と一緒。で、今ってやっぱり即返すとか、即レスがちょっと能力に関わってくる……「この人はできる、できない」みたいなのもあったりして。そうなんですよ。だからなんかもう、来たら瞬時に返すみたいなのを目標にしてたので。本当に……。

宮治:もう自分で手枷足枷しちゃったんですね(笑)。

堀井:本当に頑張ってましたけれども。やっぱりなんか、大変でしたよね。

宮治:「できる美香ちゃん」でいたかったですね?

堀井:そうだと思います。「あの人は大丈夫。美香さんのデスクの下は大丈夫」って言われたかったんでしょうね。

宮治:それが、今年の4月でしたっけ? お辞めになられて。

堀井:まあ、それが理由ではないですけれども(笑)。

宮治:もちろん。ですけども、フリーのアナウンサーになられて。そういう管理職からは解放されるわけじゃないですか?

堀井:ああ、そうです、そうです。

宮治:どうなんですか?

堀井:だからなんか、人の性格ってあんまり変わらないものでして。自由になるし、時間もやっぱり自由に使いたいなと思ったんですけど……まだちょっと私、スタートダッシュなので。やっぱりこう「全部、頑張りたい。全部、仕事を受けたい」みたいな。

宮治:すべてに爪痕を残したい?

堀井:そう! そうですねー(笑)。

宮治:フフフ(笑)。

堀井:いや、でもどうでした? 最初のときは。最初のときからゆっくりされてました? お仕事を断ったりされたんですか?

宮治:「最初」ってどこですか? なにをちょっと怖い顔で「お前もそうだろ?」みたいな……いきなり攻めに転ずるの、やめてもらっていいですかね(笑)。攻められるの、嫌いなんですね(笑)。ドSですね、ドS(笑)。

堀井:絶対に逃さないっていう(笑)。

宮治:ドS対ドSの対決なんですね、これ(笑)。

堀井:あなたもドSですか? 私、隠れドSなんです(笑)。

宮治:いや、隠れてないっすよ? ガンガンSっすよ(笑)。えっ、その「仕事を断る」っていうのは最近の話ですか? それとも前座の頃?

堀井:前座の頃。だから仕事をチェンジしたばっかりの頃。

宮治:いや、もうやっぱり高座も楽屋の立ち振る舞いも、絶対に他の人に負けないようにきちんとアンテナ張って……っていうのは、スタートが遅いですねからね。30を超えてからなんで。それは、ものすごくありました。で、着物なんか着たことがないんですけど。着物というのはこうやって、絶対に襟が乱れちゃいけないんだっていうことで。こうやってピッてやって。

そしたら今の六代目神田伯山っていう僕の同期の、今ね、もうめちゃくちゃ売れてる講釈師がいますけども。あの師匠の人間国宝の神田松鯉先生に普通に「えっ、君は昔から着物を着て何かやってたのかい?」って言われたりとか。「いやいや、はじめて着ました」とか。やっぱりそう言っていただけるぐらい、動き方とかすごく気をつけて。目につくような……良い意味で目についてもらえるような感じで動いたりとか、爪痕を残そうっていうのはすごくありました

堀井:わかります(笑)。

宮治:だからなんか前座でも、普通の前座とスーパー前座って言われるのがあるんですよ。その称号はいただいてましたね。太鼓も叩けるし、高座返しもできる。師匠方の着付けをやってもパーフェクトだし。高座をやっても……みたいな、そういうスーパー前座って言われたいなと思ったら、そう言われるようになったので。

堀井:そうすると、師匠方の会にもね、お呼びがかかったりするわけですね?

宮治:そうですね。やっぱりそうすると使いやすいから。「じゃあ○○ちゃん。君、ちょっと来てよ」みたいな感じのやつで呼んでいただいたりとかはしたんですけど。逆にフリーアナウンサーになってこの数ヶ月間、どういうスタートダッシュをしてるんですか?

堀井:いや、もうだから今はなんて言うんでしょう? 来たものは本当に100%……今日の仕事もですけれども。もう、200%やって帰ろうと思ったり……。まあ、序盤でコケましたけどね(笑)。

宮治:いやいや、すごいっすね(笑)。なんか僕、もうすごいベテランアナウンサーさんとご一緒するっていうことで、普通になにか聞かれたことをペラペラしゃべればいいのかなと思ったら、いきなり怖い目で「シャーッ!」って引っかいてきたんで。「ああ、これは戦いだな」って思って。もう、「どっちが笑いを取るか?」みたいな感じになってるんですよ。そんなの、やめましょうよ(笑)。もっとどっしり構えて、ちゃんと回してくださいよ(笑)。

堀井:あの、そうなんですけれども……そうなんです。一生懸命1個1個、やろうと思って。やっぱり今、ちょっと熱が入ってるところなので。これをだんだんと緩めていって、いつか心地良いその仕事のやり方を1年後、2年後にできるといいなと思ってますけどね。

<No.03-04へ続く>

文:みやーんZZ


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