クリエイティブディレクターが語る「“働く”の100年史 」の裏側 〜EPOCH佐々木さんインタビュー〜
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クリエイティブディレクターが語る「“働く”の100年史 」の裏側 〜EPOCH佐々木さんインタビュー〜

先週公開したムービー“働く”の100年史|100 YEARS of WORK in JAPAN」

このムービーは、EPOCHさんというクリエイティブレーベルとタッグを組み、制作したものです。

なかでもクリエイティブディレクターの佐々木渉さんは、
「2分間で見る、100年の働き方」というクリエイティブのコアとなるコンセプトを生み出していただいた方。

クリエイティブディレクター佐々木さんの写真

佐々木渉 / Creative Director, Planner / EPOCH Inc.
クリエイティブエージェンシー EPOCH に立ち上げから所属を開始。テクノロジーと映像の組み合わせを強みに、PR視点を持ったインタラクティブコンテンツ、映像、リアルイベント、OOHなど、統合的にプランニング、ディレクションを行うことを得意とする。主な実績に、Microsoft Surface「まだタイトルのない君へ。」、DESCENTEのグローバルリブランディングや、安室奈美恵のGoogle Chromeを使った世界初のミュージックビデオ「Anything」など。
ウェブサイト:https://www.epoch-inc.jp/

映像について実験室目線からご紹介した昨日の記事に続き、
今日は、働くの実験室(仮)の室長 nakamari から佐々木さんへのインタビューをお届けします。
制作パートナーの目に「“働く”の100年史」はどのように映り、どのような道程で完成に至ったのでしょうか。一緒に振り返ってみたいと思います。

今回のムービーがどんな風に形になっていったのかを知りたい方、特にクリエイティブの部分に興味を持っていただいた方におすすめの内容です。

「歴史を知ることで未来を考えるキッカケ」を作れたら

nakamari:
佐々木さんこんにちは!改めて、今回は素敵なムービーを制作いただきありがとうございました。そして本当にお疲れ様でした…..!
今回は、このムービーの企画から完成までについて、佐々木さんの視点から振り返っていただければなと思っています。よろしくお願いします。

佐々木さん:
お疲れ様でした...!無事に公開できてよかったです。
そしてすでにたくさんの方々に見ていただいていて僕もとっても嬉しいです。今日は何でも話しますので、お願いします!

nakamari:
公開早々たくさんの反響をいただいているんですよね。いただいた感想を見ても、ムービーに込めたメッセージがきちんと伝わっている気がしていてありがたいなと思ったり。
それでは早速ですが、最初の質問にいきますね。
今回の企画にあたり、「働くの100年を振り返る」というテーマをご提案いただいた理由や背景を改めて教えていただけるでしょうか。

佐々木さん:
プロジェクトスタート時のオリエンテーションでのSmartHRのみなさんとの議論がきっかけです。
SmartHRというサービスが、「Employee First.」というビジョンを掲げ、企業のみならずすべての人の“働きやすさ”を支えようとするものであること。そしてさらに、これからの人の働き方や企業のあり方を、社会に問いかけ共に考える「働くの実験室(仮)」というプロジェクトを新たにスタートしようとしていること。
サービスとして伝えていきたい、そして社会と一緒に考えていきたいメッセージをみなさんから伺い、その後も話し合いを重ねていく中でいくつかの方向性が浮かびました。その中の一つに今の企画の原型がありました。この企画は、みなさんの話の中にもあった「今現在の私たちの働き方がどのようにできたのか」を知ること、「歴史を知ることで未来を考えるキッカケ」を作れたらいいなと思って考えはじめたものです。

また、リサーチの過程で、今回の企画を監修してくれた早稲田大学の原克先生の記事に出会ったことも、アイデアを固める大きなきっかけの一つでした。
その記事で、2020年代は「サラリーマンという仕組みが誕生してからおよそ“100年”である」ことを僕は初めて知ったんですよね。そして、この “100年” という数字に惹かれるものがあり、たくさんの方にメッセージを届けるためのフックになりそうだなと感じました。
そもそもはじめは「歴史を語る」というと固いイメージになってしまうことを懸念していたのですが、「“100年” の歴史を、“2分” で駆け巡る」って言うとなぜかちょっと見たくなりませんか?そんな数字のマジックも使えそうだと思ったので、提案に至りました。
そしてムービーを見たくなる演出として、テーマとの相性も良く、「エモい」ピクセルアート(ドット絵)を起用することを考えました。その理由は、後ほどお話しできればと思います。

nakamari:
佐々木さんにはオリエンテーションの時から、たくさんの質問を投げかけていただき、私たちも改めて自分たちのサービスについて考えるいいきっかけをいただいたなと思っています。
そして、実は私も「働くの実験室(仮)」プロジェクト立ち上げのためにいろいろリサーチを進めていた時に、そもそもこの先の働き方について考えるためには、これまでの日本社会の働き方だったり、先人たちの経験をきちんと知らなくてはいけないなと考えることがよくあったんですよね。そんな背景もあって、佐々木さんからこの提案をいただいたとき、ピンときてわくわくしたことをよく覚えています!

佐々木さん:
そうですか...!そんな風に言っていただけてよかったです。僕もこの企画を思いついた時、とてもいい予感がしたんですよね!


数十年前に戻ったかのような、アナログな方法でかきあつめた史実

nakamari:
それは次に、具体的な制作過程を振り返らせてください。制作上大変だった部分はたくさんあると思いますが、特に印象的なエピソードがあれば教えていただけますか?

佐々木さん:
そうですね。100年=1世紀という時間は、あまりに長くて、とにかく時代考証に苦労しました……。
まずはコンテ(動画の設計図のようなもの。ラフスケッチ)を作るために、100年という歴史の中でどのような働き方があったのかを洗い出す必要がありましたし、その後シーンに入れることが決まった各時代の働き方をアニメーションで再現するための参考資料集めや膨大な時代考証が必要になったんです。
ただ、100年前の写真なんてそう簡単に見つかるものでもなく……。
国立国会図書館、NTT技術史料館、鉄道博物館など史実を確認できる施設へスタッフが足を運んだり、ときには「月面着陸が一面ニュースになった1969年7月下旬の富士山にかかっている雪の量」をピンポイントで調べるために、日本富士山協会に問い合わせたりしたこともありました。
本当に数十年前に戻ったかのようなアナログな方法でプロデューサーとプロダクションマネージャーが、情報をかき集めてきてくれましたね。
また、集めた情報の解釈や判断に迷う時に、監修の原教授に何度も相談させていただけたのもありがたかったです。
それでも決して万全とは言えない情報量のなかで演出してくれた監督の大月壮さん、これだけのシーン数をハイクオリティなピクセルアニメーションで描ききったモトクロス斉藤さんはさすがの一言です!

下記説明文にて補足あり

(👆上記のシーンで新聞の一面記事になっている月面着陸は、1969年7月の出来事。当初は窓の外に少し雪をかぶった富士山を描く想定だったところを、調査の結果を反映して夏富士に修正した。)

nakamari:
時代考証の調査の様子は適宜共有いただいていましたが、いつも本当にすごいなと思っていました。背景の小さなディティールを描くために、いろいろな場所や機関に連絡し、足を運び、事実確認をしていただいたというご報告をいただく度に、プロジェクトメンバー一同「そんなところまで……!」と感激していました。みなさんの決して妥協しないプロフェッショナルな仕事ぶりを見せていただいて、私自身の仕事のことを振り返ったりもして、とっても刺激になっていました。

佐々木さん:
ありがとうございます。どの仕事もそうですが、やるからにはいいものにしたい一心ですね。ちなみにこの数ヶ月で制作メンバーみんな、かなり日本の働き方の歴史に詳しくなりました。きっとそれはSmartHRのみなさんも同じだと思うんですが(笑)

ピクセルアートならではの不完全さのある「エモさ」

nakamari:
ところで先ほども話されていましたが、今回のムービーはピクセルアート(ドット絵)が一つのキーポイントになっていますよね。この表現方法を選び、なかでもモトクロス斉藤さんを起用したいと考えた理由を振り返っていただけますか。

佐々木さん:
冒頭で、「歴史を語る、というと固いイメージを持たれてしまうのでは」という懸念があったとお話しましたが、それを払拭するための大きなポイントの一つがこのアニメーションによる演出です。動画を見たくなるフック = エンタメ性を付加したいなと考えました。

実は、「歴史→昔→懐かしい→エモい」
というシンプルなロジックで、ムービーには、よりノスタルジックさを感じてもらえるアニメを採用したいということが割と早い段階で自分の中で決まっていたんです。最近はLo-Fi Hip Hopというジャンルが世の中で受け入れられていたり、若年層が中心のTikTokで’80s〜’90sの昔のアニメがアーティストの楽曲に乗せておすすめに流れてきたりと……。そんな時代背景もあって、「歴史×アニメ」という演出はビジネスの前線にいる世代だけではなく、若い世代や上の世代にまで受け入れてもらえる可能性があるかもしれないと考えたんですよね。

(👆リファレンスの一つになった、Lo-Fi Hip Hopという音楽ジャンル。)

そこで声をかけたのが、旧友でもある大月壮監督。そして、大月さんのベストパートナーとも言えるピクセルアーティストのモトクロス斉藤さんでした。ただ、この時点では、まだ通常のアニメにするか、モトクロス斉藤さんの一番の得意領域であるピクセルアートにするか迷っていたんです。試しにムービーにも出てくる電話交換手の女性を両方の表現で描いてもらったのですが、どちらも素敵だったのでさらに迷いましたね(笑)。

下記説明文にて補足あり

下記説明文にて補足あり

(👆モトクロス斉藤さんの作画。通常のアニメバージョンと、ピクセルアートバージョン。)

SmartHRのみなさん含めての議論の場での最終的な判断基準としては、モトクロス斉藤さんしか描くことができないのではないかと言えるほどの彼の絵の独自性や、ピクセルアートならではの不完全さのある「エモさ」だったと思っています。恐らくこの感覚は昔のセルアニメを見ていいなと思う感情と近しいものがあるんじゃないかと思うんですよね。
「動画を見たくなるエンタメ性」と「幅広い世代に受け入れられ、同時に懐かしさも感じられる『エモさ』」を演出するという狙いにぴったりだと思い、最終は納得感をもってピクセルアートを採用しました。

nakamari:
そうなんですよね、どっちも素敵でしたよね。ご相談いただいた時、私たちもとても迷ったのをよく覚えています。作品の印象を決める大きな分岐点になる予感がしましたし。結果として、ピクセルアートのもつノスタルジックさや表現方法としてのある種の新鮮さ、そしてとりわけモトクロス斉藤さんの絵の唯一無二の魅力に懸けてみたいなと思ってピクセルアートを選びましたが、改めて完成したムービーを見てみて、選択は間違っていなかったなと思ってます。

佐々木さん:
ここは最後までみんなで迷ったところでしたが、結果としてすごくいい選択になりましたよね・・!企画当初は通常のアニメーションの想定でしたが、プラン変更して、攻めの選択をしてよかったなと。

ピクセルアートの魅力に負けない強さをもつ、HIMIさんの歌声

nakamari:
ムービーの楽曲は、HIMIさんにお願いしましたね。HIMIさんの起用をご提案いただいた背景を教えてください。

佐々木さん:
HIMIさんの音楽性と今回の企画の相性はもちろん、HIMIさんがご自身で楽曲を手掛けることも、歌うこともできるアーティストだったことが理由です。あとは、ハミングを入れてもらいたかったのが大きいですね。HIMIさんの歌声には、ピクセルアートというアート性の高い絵に負けない力があるので、映像をより強いものにしてくれるなと感じていたんです。
HIMIさんに楽曲を提供していただけたことで、さまざまな世代に響くカルチャーの要素を含みつつ、ムービーのメッセージを伝えるという点でも高いクオリティに仕上げることができたと思っています。

nakamari:
HIMIさんの歌は私も以前から時々聞いていたのですが、ご提案いただいた時に、改めて今回のムービーのもつ普遍的なメッセージ性にぴったりだなと感じました。制作の途中、HIMIさんに最初にいただいたデモ音源がとても素敵で、その時にこの映像はきっといいものになるなと確信できたんですよね。

佐々木さん:
バッチリはまるキャスティングができて、僕らも嬉しかったですね!

制作に没頭しすぎて・・・

nakamari:
それにしても、スタート〜完成までの5ヶ月、本当にあっという間でしたね。制作過程全体を通して印象的なエピソードはありますか?

佐々木さん:
時代考証とクリエイティブ制作に一生懸命になりすぎて、納品スケジュールを約1ヶ月も伸ばしていただいたことです……。その節は大変申し訳ございませんでした! SmartHRのみなさんの寛容な心と、より良いものを一緒になって制作していただける姿勢に感謝すると共に、これからも足を向けて寝れません(汗)。

nakamari:
いえいえ、とんでもないです(笑)。
私たちもこの企画に惚れ込んでいましたし、一緒に思い描いてきたイメージの強度を保ったまま完成させたいと思っていたので。それよりも、日々忙しい中で私たちの小さな疑問やアイデア、提案にもいつも耳を傾けていただき、丁寧に議論を重ねていただいたEPOCHのみなさんには、本当に感謝しています。

各シーンの背景に描かれている“メインではないもの”にも注目して

nakamari:
今日はお話をたくさん聞かせていただけてよかったです。
私も改めて、制作過程のことをいろいろ思い出しました。
最後になりますが、改めてこのムービーで見てほしいなと思っているポイントを教えて下さい。

佐々木さん:
そうですね。タイトルが「“働く”の100年史」なので、この1世紀の日本の働き方の移り変わりを見てほしいのはもちろんですが、各シーンごとの背景に描かれている“メインではないもの”にもぜひ注目してみてほしいです。その時代を象徴するできごと、物、社会事情などを散りばめているので、探してみると面白いと思います。たぶん、当時を知らない世代のみなさんにとっても「教科書やTVで見たことある!」という部分もたくさんあると思うので、なぜか懐かしいという感覚になってもらえるはずです。そして、もっと楽しみたい方は父親や母親、もしかしたら祖父母と一緒に見ると会話が弾むかもしれません(笑)。

nakamari:
実は私も、完成後に早速祖母にムービーを見せたのですが、すごく感慨深そうにしていて。曽祖母が実はムービーにも出てくる電話交換手だったなんていう初耳の話も出てきたりして、こうやって世代を超えて新しい会話をするをきっかけになるのも、の作品の魅力の一つだなと改めて感じたんですよね。これからもたくさんの人に長く愛される作品になればいいなと思っています。
あと、佐々木さんはじめEPOCHチームのみなさんとも、そのうちにまた何かご一緒できたら嬉しいなと思っています。今回は、お忙しい中ありがとうございました!

佐々木さん:
ぜひぜひ!いつでもご相談お待ちしています。
今日はこちらこそ、ありがとうございました!

おわりに

佐々木さんへのインタビュー、いかがだったでしょうか。
ムービーに込めた意図や、チームで作り上げてきた企画・制作の雰囲気を、少しでもお伝えできてていれば嬉しいです。

各時代のシーンではどのような様子を描いていたのか、その時日本社会では何が起こっていたのかについては、「“働く”の100年史」スペシャルサイトで解説しているのでぜひこちらもご覧ください。

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また、働くの実験室(仮)では、「“働く”の100年史」に続く、第二弾、第三弾の企画も絶賛準備中です!こちらもお楽しみに。

■働くの実験室(仮) 公式サイト
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