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読む、 #ウェンホリ No.18「どうせなるなら、熱狂する素人でいたい」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。

第18回では、アナウンサーの堀井美香さんと小国士朗事務所のプロデューサー小国士朗さんが、「素人感覚の活かし方。その道のプロが見えなくなるもの」をテーマに語り合いました。

「プロフェッショナル 仕事の流儀 (NHK)」のディレクターを務めていた時期に、自分自身の専門性について考えることになったという小国さん。一時期は何者でもない自分がコンプレックスだったそう。しかし、「プロであるからこそ見落としていることがあるのでは?」という気づきが意識の変化につながったとか。そんな小国さんの体験を交えたトークが繰り広げられました。

何者でもない自分がコンプレックスだった

堀井:今回はですね、小国さんと「素人感覚の生かし方。その道のプロが見えなくなるもの」という、なんかちょっと胸をえぐられるような……(笑)。

小国:えぐられますか(笑)。

堀井:いろいろ見えない過程がありましたね。なかったですか? ということで、たとえばスポーツの世界ではアマチュアとプロの線引きがしっかりなされている場合があります。プロ野球選手、プロサッカー選手などなど、卓越した知識と技術を持って、それを仕事にしてお金を稼ぐということを「プロの仕事」と称しますね。

また自分の仕事に誇りを持って志を高く保つ姿勢を「プロ意識」なんて呼ぶこともありますけれども。ただ、誰もが最初は素人というところでして。小国さんがインタビューで「素人であることが実は強み」とおっしゃっていたのが印象的だったんですけれども。この考えはどこから出てきたものなんでしょうか?

小国:そうですね。僕自身、NHKでディレクターをやっていて。『プロフェッショナル 仕事の流儀』っていう番組をやっていて。まさに、本当に第一線のプロの方ばっかり取材させていただいたんですよね。で、その取材自体はめちゃくちゃ面白かったし。「プロフェッショナルの方、プロの方ってすげえな! 面白いな!」って思っている一方で、「じゃあ自分って、何のプロなんだろうな?」みたいなこととかがけっこうコンプレックスだったんですよね。

なんかNHKのディレクターとか記者とかって、やっぱり専門性が高い人も結構いて。医療の専門家であったりとか、動物とか芸能とかスポーツとか、いろんなスペシャリストがいたんですけど。僕にはなくて。なんか「これをやったら次、こっちも気になるな」とか、すごい雑食だったんですよ。だから「自分って専門性がないな」っていうことがすごくコンプレックスだったんですよ。元々は。そんな僕がまた『プロフェッショナル』なんていう番組をやっているもんだから、余計に「自分ってなんだろうな? 何もないな」って思っていたんですけど。

で、さらに僕、33歳のときに心臓病になっちゃって。で、番組制作自体もできなくなっちゃったんですよ。そうすると僕、本当に何にもなくなっちゃって。で、ただの小国士朗になっちゃったんですよね。で、そのときに「あれ? じゃあ自分って何なんだろうな?」っていうふうに考えたんですけど。でも、その後につくりはじめていくプロジェクトっていうのが、番組はつくれなくなっちゃったんだけど。番組以外の方法で大切な情報とか価値を届けようっていうことで、「注文をまちがえる料理店」っていうプロジェクトをやったりとか。がんをテーマにした「deleteC」っていうプロジェクトをやったりとかっていう。まあ前編でも語ってるようなことですけど。

素人であることの強みとは?

小国:そういうのやっていったときに、僕はその認知症のプロでもないし、がんのプロでもないし。またここでもプロじゃないんですよね。なんだけど「そんなプロじゃない僕だからこそ、実はこういう『注文をまちがえる料理店』とかで『deleteC』みたいなプロジェクトができるんだ」っていうことに気づいて。「あれ? これって素人であるほうがこういうアイデアって浮かぶんじゃないか?」っていうふうに段々と思うようになって。「だとしたら、この素人であることって強みだな」っていうふうに思うようになったっていうことですね。

堀井:なんか素人の強みってどういうことなんだろうな? って思って。

小国:でも堀井さんはアナウンサーでいらっしゃるから。僕なんかよりもたぶん、よっぽどいろんな方々にインタビューしたりとか、お話をされると思うんですけど。どのジャンルに対しても、すべて精通してるわけではないと思うんですよ。このジャンルとかこの業界のこと、全然わからん」とか。だから常に素人状態が……。

堀井:ああ、そうですね。どこに行ってもそうですよ。毎日……1日にいろんな現場に行くじゃないですか。どこも素人だし。いろんな人にインタビューしても……ねえ。そういう感じですけど。でもなんか、おっしゃっていることはわかります。なんか、「何者でもないので、なにかになれそう」っていうか。なんか、そうですね。素人なりにっていうのはありますよね。

小国:そうそう。でも、「何者でもない素人だからこそ、こんな質問ができちゃった」みたいな。

堀井:そうそう! そうなんですよね。

小国:そういうの、ありますよね?

堀井:あります。たとえば面接試験の時とか、学生さんに「会社に入ってから、何をしたいんですか?」って聞くと、突拍子もないことを言う子とか、いるじゃないですか。たとえば「TBSに入って、フジも日テレも出られるようなアナウンサーになりたいです」って言った子とかがいて。「うーん、それはさすがに無理なんだよな」って思ったんだけど。たぶん、そういうことを学生は知らないから。だから本当に知らない子は言っちゃうんですよね。でもそれって、実現できるかもしれないし。そうなんですよ。

小国:そこに実はめっちゃ可能性があったりするじゃないですか。たとえば、オリンピックとか。そういうときって、局を横断してアナウンサーが集まって。「一緒に応援しようぜ!」みたいなこととか。あとはたとえば今だと環境の問題とか。なんかそういうのって、「もう局とか関係ないよね。一緒になってやろうぜ!」みたいなことが普通に起きるわけで。なんか勝手に思い込んでることって、あるじゃないですか。プロは

堀井:そうなんです。その子は「昼の帯を全局、自分の顔で埋めたい」って言っていて。「すごいな」と思いながら(笑)。

小国:それ、めちゃくちゃいいですね(笑)。

イノベーションを邪魔するのは中途半端なプロ

堀井:「それは難しいかもな」って思いながらも。でも、「それもきっと出来ちゃうんだろうな」と思って。きっと、私たちの慣習とか伝統とかルールとか。それで「できない」って思っているだけで。すべて、そういうことなんですかね?

小国:そうそう。僕、だからすごい今の話、面白いなと思うんですけど。プロの方が思い込みとか、けっこう強烈にあって。「いや、そんなことやったら大変なことになるよ」とかね。そういうことを言っちゃいがちなのはプロの方で。素人は「えっ? だってこれ、やりたいんですもん。帯を自分の顔で埋めたいんですもん」っていう。

堀井:そうそう(笑)。「楽しそうじゃん!」っていう(笑)。

小国:「楽しそうじゃん? だって私が毎日、どこでも見れるんですよ?」っていう。だから、それを思っちゃったわけですよね? 僕、よく思うんですけど。一番、イノベーションとか、そういうのを邪魔するのは「中途半端なプロ」だと思っているんですよ。

堀井:すごいわかる(笑)。

小国:わかります?(笑)

堀井:中途半端なプロだから(笑)。

熱量の高い素人が世界の歴史を変える

小国:いえいえ。で、熱狂する素人の方がイノベーションに近いと思うんですよね。で、僕はなんでこれを思ったか? っていうと、YouTuberっていう人たちが出てきたとき。そのときに僕はNHKにいたんですけど。もうね、「この人たちって本当にしょうもないコンテンツをつくるな」って思っていたんですよ。「こんなの、なんだ?」って。コンテンツっていうのは僕のような、NHKのディレクターがつくるものがコンテンツであって……。

堀井:信頼と実績のNHK印(笑)。

小国:「これこそがコンテンツである!」っていう。で、「YouTuberの人がやってるようなものはコンテンツじゃない」って本気で思っていたんです。そしたら、あれよあれよという間に、小学生のなりたい職業ランキングの1位がYouTuberで。誰もね、「NHKのディレクターになりたい」なんて言ってくれている小学生はいないわけですよ。で、その現実を目の当たりにしたときに、「俺はなんて中途半端なプロだったんだろう!」と思ったんですよね。でも、YouTuberの方たちが、たしかにコンテンツをつくるというスキルで言えば、拙いところもあったのかもしれない。今では全然違うと思いますけどもね。

でも、当時はそんな感じで。だけど「これをやりたい。こんなことを見てみたい!」っていう、その熱狂。これに勝るものないよなと。その熱狂にみんな当てられて、見ちゃう。「なんか楽しそう」っていう。なんかね、僕はそれがいちばん、自分のなかの反省として強くて。「やっぱり中途半端なプロになっちゃダメだよな」みたいな。

だから、どうせなるなら、熱狂する素人でいたいな、みたいな。本当は熱狂するプロはいいんでしょうけどね。なんかね、それをすごい感じたんですよ。だから、邪魔するのは中途半端なプロというのはすごい思ったり。

堀井:なんか、パワーがやっぱり違いますよね。もちろん、私たちもパワーを持っていましたけども。テレビ局のときは。でも、なんでしょうね? 全然違いますよね。

小国:違いますね。だからなんか、思い込みとか、すごいですよね。

堀井:あと、若干の損得勘定というか。自分のそのポジションもそうだし、お金のこともそうだし、いろんな組織として1個の作品をつくるっていう、なんか責任みたいなものもあって。それを失ってはいけないとか、いろんなことを作品をつくるのに考えちゃうんですよね。

小国:そう。いろんなものがくっついてくる。でも、よく考えたらそれを勝手にくっつけているのは自分で。なんか「テレビとは、コンテンツとは、企画とは、こういうものである」みたいなことを勝手に思い込んでるんですけど。僕、よく思うんですけど。ライト兄弟っているじゃないですか。飛行機を作ったっていう。でもあの人たち、元は自転車屋さんなんですよね。だから究極的に素人じゃないですか。

だから「空を飛びたい!」っていうときにたぶんみんなにめちゃくちゃバカにされたと思うし。「いや、まず速く走れるチャリをつくれよ」みたいなことだったと思うんですけど。でも「飛びたい」っていうほうに行っちゃったわけですよね。だけど、その熱量が世界の歴史を変えた。人類の進歩に繋がったっていう、そこらへんにその熱狂する素人力っていうか。そこがなんか、かっこいいなと思うんすよね。

堀井:すごくわかります。あと、そういう人たちのほうが意外に相手のニーズをちゃんと捉えたりしますよね。

小国:世の中とかね。

堀井:そうそうそう。私たちは作品としてちゃんとしたいから。けっこう、相手がありきというよりは、こちら側ありきなことが多いじゃないですか。

小国:そうそう。つくり手の理屈になっちゃっていたりとか。

堀井:今のYouTuberの人とかを見ていても、もちろん自分たちも楽しそうだし。なんか、見てる人もそれを欲して見ていて。ねえ。素晴らしいなと思いますね。

小国:本当ですね。

<書き起こし終わり>

文:みやーんZZ


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