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読む、 #ウェンホリ No.07-03「一生追いつけないのが真のヒーロー」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。第7回の芸人・小沢一敬さんとベーシストのハマ・オカモトさんの対談から「一生追いつけないのが真のヒーロー」をお届けます。

小沢さんのヒーローである真島昌利こと、マーシーさんについて話しはじめてからどんどん本筋から離れていくかに思いきや、実は好きを仕事にすることの楽しさにつながっていく不思議な話し合い。今回は小沢さんとハマさんがそれぞれに知っているマーシーさんの秘蔵話が飛び出ます。

<No.07-02から続く>

すべてが真島昌利基準で生きる小沢さん

小沢:結構ね、俺はやっぱ真島さんが基準なの。中学校のときに真島さんを見て「なにかやりたい」と思って。まあ、子供の頃、バンドはじめたりとか、それでダウンタウンを見て……とか、いろいろあったんだけど。もうスタートは絶対に真島さんで、真島さんがすべての基準なの。それで今、当然OKAMOTO'Sもさ、曲をつくったり、ライブをやったり。俺らも今、月に1本、漫才ライブをやってるんだけどさ。真島さんが昔、インタビューかなんかでさ、「曲づくり、大変でしょう?」みたいな話をされたときに、「いや、曲づくりに苦労するっていう人いるけど、しんどいならやらないよ。好きだからやってんだよ」って言っていたの。俺も、そのスタンスでいたいんだけど。でもやっぱり、つくるときは苦労するときもあるよなっていつも思って。「マーシーになれねえな」っていつも思うのよ(笑)。

ハマ:なるほど(笑)。

小沢:「余裕だよ。楽しんでつくってるだけだよ」って言いたいんだけど(笑)。

ハマ:で、ポーズで言うのも違いますしね(笑)。

小沢:違うからね。

ハマ:「マーシーがそう言っていたから、本当は大変だけどこうやって言おう」っていうのは違うじゃないですか。それはやりたくないですもんね。

小沢:で、俺は「マーシーになれねえな」とは思うけど。でも、やっているときとか……ちょうどね、1週間ぐらい前に毎月やっている漫才ライブがあって。若い子もゲストに呼んだりして、終わった後に打ち上げをやっていて。「なんでこの歳になって毎月、新ネタライブをやるの?」って言われたの。

ハマ:おおー。「大変なことじゃないですか?」って。

小沢:「新ネタ、やりたいんすか?」って。それで俺、言ったの。「俺は新ネタがやりたいんじゃないのよ。打ち上げがやりたいんだよ」って言ったのよ。で、「ああ、これは決まったな」って思ったの。そしたらなんか、クロマニヨンズとかのインタビューを読んでいたら、「僕ら、打ち上げはしない。だってライブより楽しいパーティーはあるのか?」って言っていて。また俺、マーシーから遠のいているなって(笑)。どんどん離れていくなっていう(笑)。

ハマ:フハハハハハハハハッ! 「いちばんはショータイムだろう」って(笑)。

小沢:そう(笑)。「それより楽しいもの、あるのか? 打ち上げ行っても楽しくないじゃない? ライブがいちばん楽しいんだから」って。「あれ? 俺、言っていること、違うな? 俺、ただかっこつけてるだけじゃないか」って。反省はしている(笑)。

ハマ:ああー、いいですね。なんかやっぱり一生追いつけないのが、やっぱりヒーローですもんね。クロマニヨンズ、だって観てたら袖で汗だくのまま車に乗って帰りましたもん。めちゃめちゃかっこいいですよ。楽屋に戻らないんですよ?

小沢:ギリギリに来て、パッて曲をやって。すごいかっこいいよ。

ハマ:袖から直で機材車に乗って帰られました。だからやっぱりその発言はね、その通りなんだろうなって。

小沢:最高にかっこいい。フェスとかでもさ、ベテランのバンドになってくるとさ、だんだん曲がゆっくりになったり、パフォーマンスがいわゆるこの表現、合っているかどうかわからないけども。大人のパフォーマンスというかさ。なんだろう? ゆったりとして横乗りの……みたいなのになってくなか、どんどん若返っていく感じするのよ。クロマニヨンズって。めちゃくちゃ、いまだにいちばん激しいパフォーマンスっていうかさ。

ハマ:そうですね。ああいう立ち上がりみたいなものを「音の立ち上がり」とかよく言うんですけど。やっぱ年齢とともにそれって絶対、もう肉体的にも失われているらしくて。よくそういう先輩方の演奏とか、まあもう世界広しとミュージシャンはいるんで。まあ名演と呼ばれるものとか、やっぱり僕も聞いて。好きで体現しようとするんですけど、やっぱりすごくそれが難しいんですね。で、それはテクニックじゃなくて。たとえばベースだったら簡単な「ボーン♪」っていう音を鳴らす、「ボーン♪」の長さがそういう経験値を積んだ人たちって、ものすごく長いんですよ。

それはもう、体現できないんですよ。もうこんなに長くやったら、チキンレースじゃないですけど、落ちちゃう。次に行っちゃう。小節が次に変わっちゃうっていうところまで、伸ばすんですよ。で、そんなことってできないってなって。で、以前そういう話をしたときに先輩たちから……ドラマーの河村"カースケ"智康さんっていう方がいるんですけど。日本の音楽の一線でずっと叩いてらっしゃる方で。その方が「それは本当に言ってくれるけど、物理的に生き物としてそうなっていってしまってるってことも事実あるよ。だからこそ長く続けると、できなかった演奏ができるようになって楽しくなる」っていう話をされてて。

それはひとつ、すごく楽しみというか、いい話を聞いたなと思ったんですけど。そのクロマニヨンズに戻ると、そのたぶん「長く」とか、「ゆっくり」とか、「情緒を持って」ってことももちろんできるじゃないですか。でも、それによって失われていくとされている、その立ち上がりをまだあれだけ持っているっていうのが、やっぱり恐ろしいなとは思いますね。

小沢:本当に恐ろしい。あの人たちは。

ハマ:だからなんか、まあね、そういう芸事に年齢は関係ないっていう目線はもちろん前提でありますけど。特に音楽。

ヒロトとマーシーのいい話

小沢:また、なんとか戻していい?

ハマ:ああ、もちろん(笑)。小沢さんパーソナリティですから(笑)。

小沢:「好きを仕事にするって本当に心地良い?」ってあるじゃん。だってヒロトとマーシー。ヒロトさんと真島さんって、いまだに2人でレコード屋に行ったり。本当に音楽大好きなの。

ハマ:そうですね。あの話、知ってます? 小沢さん、知ってるか。なんかヒロトさんがレコードを買いに行って。「うわっ、すごいほしい!」って思ったんですって。でもなんか、ちょっと気の迷いで1回帰ったらしいんですけども。「いや、でもやっぱり買わなきゃダメだ!」と思って戻ってきたら、売れてたんですって。でも、それはなんか1週間とかじゃなくて、その1日の出来事らしいんですけども。「うわーっ!」って思って。で、馴染みの店員さんだったから「誰が買ったの?」って。やっぱりそういうのを買う人って、もう有名だろうが無名だろうが、みんな知ってる人たちなんで。そしたら「マーシーさんです」って言われて「だったらいいや。友達だから借りればいい」って言ったんですって(笑)。

小沢:最高ーっ! ありがとう!

ハマ:いや、いい話だなと思って。そう。僕らのレコードを買うんで、お話をさせていただいたときに「そういうの、ない?」って言われて。「メンバーが買っているんだったら、別にいいよね」って(笑)。

小沢:そうだね(笑)。めちゃくちゃいいな(笑)。

ハマ:いや、いい話だなって。本当、2人とも……。

小沢:俺もあるよ。俺もヒロトとマーシーのいい話、あるよ?

ハマ:「ヒロトとマーシーのいい話」なんですか? 「スピードワゴンの」じゃないんですか?

小沢:あるよ? していい?

ハマ:ああ、もちろん、もちろん(笑)。聞かせてくださいよ。

小沢:ヒロトさんと真島さんが取材を受けたていたの。そしたらね、取材の人が言うのよ。「しかし本当にヒロトさんと真島さんは歌詞がいいですよね」って。この話、知っている?

ハマ:いや、わかんないです。

小沢:そしたらね、どっちが言ったのか、ちょっとうろ覚えなんだけど。片方が、ヒロトさんか真島さんかのどちらかが、「でもな、歌詞は指だからな」って。ちょっと今、言い方はヒロトさんに寄せてましたけど(笑)。

ハマ:「あ、ヒロトさんだったんだ」って思いましたよ(笑)。

小沢:「歌詞は指だからな」って言ったんだって。そしたらもう片方、真島さんかヒロトさんが「うん、そうだよ」って。これ、当然意味わかんないじゃん? で、その取材をしているインタビュアーが聞くの。「歌詞が指ってどういう意味ですか?」って。「うん。帰り道、夜歩いてるんだよ。『月がきれいだな。あの月を歌おう』『どの月?』『あの月だよ』って差してる指が歌詞なんだ。僕らは月を歌っている。そこにはメロディやパフォーマンス、ギターやバンドとしての表現があって。それで月を表してるのに、『どの月?』『あの月だよ』って差してる指だけ褒められても困るんだよな」っつったの。

ハマ:ああ、なるほど!

小沢:これ、めちゃくちゃよくない?

ハマ:ああ、そこに返ってくるんですね。ああーっ! 「困るんだよな」っていうことなんですね(笑)。

小沢:そう。「指だけ褒められてもな。僕らは月をやってるのに」っていう。

ハマ:ああ、なるほど!

小沢:さあ、みなさん、「好き」を仕事にしましょう!(笑)。「好き」を仕事にすればね(笑)。

ハマ:ヒロト×マーシー、何十周年特別プログラムじゃないんですよ、これ(笑)。

小沢:ああ、そう? ヒロトとマーシーについて語る会ではない?(笑)

ハマ:いや、でも2人のその「好き」の共通項のテーマ付けとして、ヒロトさんさんとマーシーさんが出たってことですからね。

小沢:そうそう。

<No.07-04へ続く>

文:みやーんZZ


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