見出し画像

読む、 #ウェンホリ No.03-04「他人から不幸に見えても、自分が幸せだったら問題ない」

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。第3回のアナウンサー堀井美香さんと落語家・桂宮治さんの対談から「他人から不幸に見えても、自分が幸せだったら問題ない」をお届けます。

「心地良い仕事がなんなのかわからない」と話す宮治さん。どんなにつらい仕事でも、それを乗り越えた先にはひとつ成長している自分がいるので、それはある意味、心地良い瞬間だと思えるそうです。そうした宮治さんの話に堀井さんは深く頷きます。

<No.03-03から続く>

できないことをやってみると、自分の武器がひとつ増える

宮治:「心地良い仕事」って、よくわかんないんですけど。僕、噺家になって。それで今、『笑点』のメンバーになったりとかして、本当に忙しいんですけど。だから、ふっと落ち着いてボーッとしてるのが心地良いのか? 力を抜いてフワッとできることが心地良いのか? それとも「つらい」って言ってるんですけど、もう自分が回せないぐらいぐらいの仕事量が来て、「うわーっ!」って言ってる今の自分も、実際は心地良いんじゃないのかな? っていう。

その、人が見るどうこうではなくて、自分のなかでどう感じているかであって。やっぱり「つらい」とか「大変だ」って言ってても、「ああ、今日は3件か。明日は2件か、4件か……明日、5時起きか。つらいな。家でゆっくりしたいな」って。でも、家でゆっくりしてたら「くっそー! なんで仕事が来ないんだ?」と思うかもしれない。やっぱり満たされるか、満たされないかっていうところも心地良さではあると思うんですよ。

堀井:ああ、そうですね。わからないですよね? なんか、難しい仕事とか、ストレスのある仕事でも、やってみると意外に成長したりとか、しますからね。

宮治:そうなんですよ。「この仕事、受けたら絶対つらいだろうな、きついだろうな」と思って。「でも、逃げちゃダメだ」と思って。「まあ、失敗しても命までは取られねえだろう」ってまず、やりました。本当につらくて、他の仕事も来てるし。それもこなしながら。それで当日、何とか行きました。それで次の日、ちょっとステップアップしてるんですよね。自分自身が。「やって良かった」っていう。それで1号ずつ、1号ずつ山を登っていくじゃないですけど。やっぱりなんか、逃げるとダメですね。なんかやっぱり常にぶち当たって、山を登っていった結果ここにいて……っていうのが今までだったので。来たものは全部、受けて。つらくてもやっていけ、みたいなのはありますね。

堀井:だからなんか、それがたぶん宮治さんにとって心地良いというか。ちょっとこう、自分で頑張る、痛めつけるみたいなところがあっても、それで返ってくるものが多いから。

宮治:そう……本当、そうなんですよね。返ってくるっていうか。絶対、自分の引き出しとか、武器になってるんですよね。だからやっぱりなんか、できることだけをずっとやってる人よりは、せっかくご依頼を受けたんだから、自分では絶対に今の装備品ではできないだろうと思うことにもチャレンジして。それをこなすとやっぱり1個、武器が増えてるっていうのはあるので。だからこれからもやっぱりその、つらいんですけど、それを乗り越えた後のこの心地良さというか。「やりきった!」っていう。それでまた、レベルが上がったっていう、あの楽しみというか。それの終わった後のビールのうまいこと、うまいこと(笑)。

棺桶に入るときに幸せだと思えたら勝ち

堀井:ビール、似合いますね。お酒がね(笑)。なんかその、高みがもう永遠に続いてるような業界ですもんね。どこまで行っても終わりがないっていうね。

宮治:ゴールがないんですよね。だから自分で決めるしかないので。よく、いろんなインタビューで言うんですけども。誰か、他の方から見たら、隣の芝生ってあるじゃないですか。「いいな、いいな」とか。でも俺からすると「あっちの方がいいな」とか思ってますけど。最終的には棺桶に入るときに「ああ、俺の人生……落語家人生も本名・宮利之としての人生も含めて俺、絶対に幸せだったな」って思ったら勝ちなんですよね。他人がどう思ってるか……「あいつは不幸だったな」と思っていたとしても、「いやいや、俺はめちゃくちゃ幸せだったよ」って思えたら勝ちだと思うので。

うちの師匠は結構、そういう人で。そんなにテレビに出たり、ラジオに出たりする人じゃないですし。寄席がメインでやってるような師匠なんですけど。そんな、めちゃくちゃ稼いでるわけでも別にないし。でも、うちの師匠はすごい幸せそうで。すっごい楽しくて。で、仕事が来ても「いや、もう俺、これ以上仕事いらない。これ、行かない。もうもう大丈夫。もう、お散歩行ってくる」みたいな。

堀井:最高ですね! そこの境地にだから行きたいですね。

宮治:そうなんですよ。で、寄席に来たら、後輩からみんなに慕われて。楽屋が明るくなって。

堀井:いや、もう最高です。

宮治:で、先輩方。絶対に逆らっちゃいけないのに、ちょっと自分が違うと思ってることを先輩がやってたら「○○さん、それ違うよ」ってパーンと言えるっていう鉄火のところもあって。かっこいいんですよね。うちの師匠は。あの人、死ぬときに絶対に「幸せだったな」と思って死ぬだろうなと思って。

堀井:いや、私たちはまだ、ここに饅頭を出されたらサーッて取っちゃいますもんね(笑)。

宮治:そうですね。もうパッと取るか、「ちょっと……あれ、なんすか?」って言って向こうを向いてる間にスッと隠すみたいな(笑)。もう本当、コソ泥のように。「お前らには、やらん。このおいしい、甘いものは!」って(笑)。

堀井:だから究極、そこにあるのを眺めて。「いやー、おいしそうだね」って言って。みんなでね(笑)。

宮治:「みんなでね、食べな」ってね(笑)。

堀井:「食べる?」っていうね。その余裕がね。

宮治:いやー、でもこれはね、「芸は人なり」ですけど。我々は無理です(笑)。

堀井:フフフ(笑)。「我々は」って、私も含めてですか?(笑)

宮治:堀井さん、あのね、俺より堀井さんの方が無理そうな気がしてきた(笑)。

堀井:はい(笑)。

<書き起こし終わり>

文:みやーんZZ


Podcast「WEDNESDAY HOLIDAY」#3の視聴はこちらから


▼Spotify

▼Apple Podcast

▼Google Podcast